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未上場SaaSにとって"Good"なリテンション率は?:2023年ベンチマーク

作成者: 弘子ラザヴィ|Apr 17, 2024 12:45:00 PM

サブスクリプションが定石のSaaS企業にとってリテンション率の水準を引き上げることは至上命題ですが、では一体何%を目標にすれば良いのか、について明確な答えを持つ企業はそれほど多くないのではないでしょうか?

・・という書き出しで SaaS Capitalのレポートを紹介した記事「"Good"なリテンションとは」を公表したのは2017年です。

それから数年へた2023年、新たなベンチマークが公開されたのでご紹介します! 皆さんが担当するビジネスの目標値について参考にしてもらえると光栄です。

なお、2017年の以下記事も併せてご参照ください。

注:SaaS Capitalの許可を頂き原文の和訳を紹介します。

2023年、未上場SaaSのGoodなリテンション率とは?

私達が長年指摘してきたとおり、「収益維持(リテンション)」は、複利で成長を加速する効果があるため、中長期的な事業の健全性を確保する上で最も重要な指標の1つです。

新規案件の受注と既存案件の維持との関係は、SaaS版「攻撃は試合の勝利に、守備はチャンピオンシップの勝利につながる(訳者補足:日々の試合は華々しい攻撃によって勝利できるが、最終的に大きな目標を達成するには確固たる守備が不可欠)」と言えるでしょう。

主要な指標の値を測定して時系列で観察すれば、自社事業の進化の様子がわかります。また同業他社のベンチマークと比較し、「普通」レベルを理解してマクロ環境の潜在的な影響を確認することも非常に重要です。

とはいえ、未上場SaaS企業にとって、上場SaaS企業のベンチマークと比較することはあまり得策ではありません。規模が非常に大きい上場企業と小規模な未上場企業とを比較することは、リンゴとオレンジを比較するのと同じで、誤解を招いたり気が散ったりする可能性があるためです。

この情報ギャップを解決し、未上場企業の業績が同業他社と比較してどうなのかを理解できるよう、弊社は10年以上前に年次調査を開始しました。

たとえば、平均年間契約額(ACV)が3万ドルの企業が、ネットレベニューリテンション(NRR)を111%から112%へ「1%だけ」向上させたなら、他にすべきことがあるのでは、と懸念されるかもしれません。

しかし、以下のデータをみると、ACVが25,000~50,000ドルの企業のNRR中央値は103%です。つまり、NRR1%という変化は小さい一方、既に同業他社の上位四分位に位置している、要は十分最適化されたレベルにあることが分かります。

リテンションのベンチマークを紹介する前に、同指標とその計算方法について説明します。

リテンションの定義 :リテンション率 or チャーン率?

ご存知のとおり、「リテンション」とは、SaaS企業の敵である「チャーン(解約)」を逆の視点で捉えたものです。つまり、グロスリテンションが95%ならチャーンは5%です。

ネットリテンションは、グロスリテンションにアップセルのプラス効果を加味するため、ネットリテンションは常にグロスリテンションより高くなります。また、一貫性を保つため、リテンション率の計算方法はコホートを時系列で追跡すべきです。

NRR(ネットレベニューリテンション)の算式

弊社の調査では、ネットおよびグロスのレベニューリテンション率について質問しました。

顧客数ベースのリテンション率は有用な指標の1つですが、私たちが最も重要だと考えていて本調査でも重視しているのはレベニューリテンション、それもドルベースの比率です。

私たちの調査において、ネットレベニューリテンション(NRR)は以下のとおり定義します。

(2021年12月時点で顧客だった企業からの2022年12月のMRR)÷
(2021年12月の総MRR)

収益にはアップセル、新商品を含むクロスセル、既存商品の値上げを含むため、NRRは0%から100%を大きく超えるケースまで幅がありえます。

GRR(グロスレベニューリテンション)の算式

GRRは、上述の公式からアップセル、クロスセル、値上げを除いた計算式です。(計算を簡単にするため、各顧客の2021年のMRRと同等ないしそれ以下と想定)。

結果、GRRが100%を超えることはありません。

未上場B2B SaaS企業のリテンション率ベンチマーク 2023年

リテンションのベンチマークは、ACVの規模別に見るのが最良の出発点です。

企業の年齢、収益規模、業種よりも、販売価格が似ている企業の方が共通点が多いです。それは、同じように組織化され、市場に投入され、顧客をサポートしているためです。月額19.99ドルのプロダクトを販売する会社と、年間25万ドルのプロダクトを販売する会社とでは全く異なるのと同じです。

下の図は、年間契約額(ACV)別のNRRとGRRの中央値を示しています。これを見ると、ネットレベニューリテンション(NRR)がACVと相関していることが分かります。

つまり重要な学びは、ネットレベニューリテンション(NRR)の高さはACVの大きさと相関しているという点です。

ACVとGRRは相関していますが少し微妙です。ACVの最も高い企業のGRRが最も高いです。具体的には、25,000ドル以上のACVを持つ企業は中央値93%のGRRを、25,000ドル以下の企業は中央値90%のGRRです。

こうした関係性は直感的に理解できます。高価格のソリューションは、多くの場合、より長い販売サイクル、より綿密なスコーピングと実装、より献身的なサポートとアカウント管理が必要で、こうしたことのすべてがより粘り強いプロダクトを生み出すためです。

ネットレベニューリテンション(NRR)の四分位数(Quartiles)

ネットレベニューリテンション(NRR)のベンチマークをさらに掘り下げましょう。下図は、ACVの規模カテゴリー別のNRRを四分位数で示したものです。

図をみると、25,000ドル以上のACVをもつ企業のネットレベニューリテンション(NRR)は中央値が少なくとも103%、下位四分位の企業でさえ97%から103%です。

10万ドル以上のACVをもつ上位四分位の企業のNRRは118%~120%です。

収益成長へNRRが与えるインパクト

一般的に、成長率が高い企業ほどリテンション率は高く、その逆もまた然りです。

これは「水漏れするバケツ(Leaky Bucket)」に例えて説明されます。リテンション率が高ければ高いほど、バケツ内に水は足りていて急いで注ぎ足す必要がないため、より早く成長することが容易です。リテンションが及ぼす影響は累積的、逆もまた然りです。

下の図は、ネットレベニューリテンション(NRR)と成長率との間に強い指数関数的な相関関係があることを示しています。

なお、成長率とNRRの相関関係は直感的に理解できます。

というのも、NRRには値上げ、アップグレード、アップセル、クロスセルといった実質的な新規"売上"が含まれており、それらは前年比での収益「成長」に資するためです。要は、NRRの累積的な複利効果が明白だということです。

年間定期収益(ARR)が100万ドル以上の企業を対象とした調査サンプル全体では、成長率の中央値は34%でした。NRRが110%以上の企業グループの成長率は母集団の中央値より高く、NRRが100%未満の企業の成長率は母集団の中央値より低い結果でした。

NRRが90%~100%から、100%~110%に増加すると、成長率は9%ポイント改善します。

NRRが最も高い企業の成長率の中央値は、母集団の中央値の2倍でした。これはアップセルとクロスセルへの投資によるリターンが増加した例といえるでしょう。

追加のデータとリソース

上述データは、詳しい調査内容を公開している弊社の調査概要書「2023年 非上場B2B企業のSaaSリテンションベンチマーク」からの一部引用です。本分析から得られたことは以下の通りです。

  • SaaS企業全体では、2023年のNRR中央値は102%で、2022年から変化なし。GRRの中央値は91%で、これも前年調査と変わりません
  • 設立から5年間は顧客の解約が始まるまでに時間がかかるため、GRRが偽善的に高くなる可能性があります。ARR別のGRRはこの点を裏付けており、わずかな変化ではあるものの、ARRが300万ドルに達するとGRRは低下し、その後安定します
  • 資金調達した企業は、ブートストラップの企業よりもNRRは若干高く、GRRには差がありません。歴史的に、VCの支援を受けている企業は両指標とも高いリテンションを維持しています。GRRに差がないことは、カスタマーサクセスのベストプラクティスが完全に普及したことを示唆しています
  • 契約期間については、複数年契約の方がNRRとGRRの中央値が高いという関係が潜在的にあることを示しています

著者 Nick Perry

SaaS Capitalは、SaaS向けオルタナティブ・レンディングのパイオニアです。2007年以来、私たちは何千もの企業と話をし、何百もの財務状況を確認し、100以上の企業に資金を提供してきました。迅速な意思決定が可能です。最初の「ご挨拶」から資金調達までの一般的な期間はわずか5週間です。