米国で誕生したカスタマーサクセスは当初、ハイタッチモデルを前提に進化しました。
それは、2020年前後の記事をみれば明らかです。例えば、CSMはどんな指標をもち、カスタマーとどう接点をもつのか、1人何社のカスタマーを担当するかなどを紹介する記事があふれています。
しかし、必ずしもすべての会社がハイタッチモデルを前提としているわけではありません。ビジネスモデル的にハイタッチモデルが非現実的な場合や、ブランドやプロダクト自体がハイタッチと馴染まない場合が多いのも事実です。
そんな企業では、「テックタッチ」の手法やプロセスが追求されてきました。
テックタッチとは、人間がカスタマーと直接会話するのでなく、テクノロジーを活用した接点を通じてカスタマーと会話(タッチ)することです。
テックタッチの具体的な手法は様々ですが、プロセスは基本的に自動化されます。なお、英語ではテックタッチの代わりに「One to Many(1対多)」とも呼ばれます。
テックタッチは、「ハイタッチを前提とするカスタマーサクセスに比べてて顧客体験(CX)が劣る」という誤解を持たれることが多いです。カスタマーに機械的に扱われたという印象を与えかねず、また、テックタッチだけでは問題解決しない場合も多いためです。
しかし、それは正しいテックタッチを実施できていない場合に起きることです。
正しいテックタッチ、つまり有効なテックタッチを実施するのは思ったほど簡単ではありません。何よりまずカスタマーを深く理解しなければならず、踏まえて適切なタイミングや接点などをきめ細かく個別化(パーソナライズ)しなければ効果がないためです。
では一体、どうしたら魅力的かつ驚嘆される顧客体験を提供できるのでしょうか? 以下に、正しいテックタッチの進め方をご紹介します。
どのモデルを採用しようとも、カスタマーサクセスに着手する場合はまずカスタマージャーニーのマッピングから始めます。
即ち、オンボーディングの改善機会や、カスタマーの関わりを深める機会、カスタマーニーズを発見する機会などに繋がるカスタマー接点はどこか・何か、を具体的に検討し特定していきます。
テックタッチを追求する企業では、カスタマーニーズを予測して先回りした自動メッセージを発信するのに最適なポイントに焦点をあててマッピングを行う必要があります。
直観的に真逆に聞こえるかもしれませんが、テックタッチの最良モデルを構築するための最善の方法は「まず人間(ヒューマンタッチ)で試す」ことです。
あるタッチポイントに対しカスタマーがどう反応するかわからない場合、まずは担当者(人間)を介して試してみることで、タッチポイントの会話の効果をテストするのです。
テストでは、会話の内容とその結果をしっかり測定してください。カスタマーライフサイクル上のあらゆるタッチポイントでカスタマーが何を必要としているのかを正確に把握しましょう。解像度高く正確に把握できなければ、プロセスを自動化できません。
次は、プロセスを自動化する番です。
CRMシステムないし顧客データベース、そして電子メールによるマーケティングプラットフォーム、カスタマーの行動やエンゲージメントトリガーを探すツールが最低限必要です。
テックタッチプログラムの進化に合わせ、カスタマーサクセスのプラットフォームやアプリ内メッセージングシステムなどのツールを追加していくのもよいでしょう。
ただし、追加するツールが多ければ多いほど、プログラムの管理作業が増えることに注意してください。ツール導入の前に、数年先のありたい姿を描いてみることをお勧めします。
あらゆるタッチポイントを自動化した後も、テストし続けることを忘れないでください。
部分的なテスト、例えば電子メールの件名と内容を改善するなどの小さなテストを積み重ねることで、カスタマーの関与度は確実に改善します。
テックタッチによるタッチポイントがカバーしていないテーマに関わるカスタマーサポートのチケットやコールが発生した時はチャンスです。
ぜひ、新しいテックタッチ向けメッセージの採用を検討し、それによって同テーマのチケット数が減るかどうか確認しましょう。コンテンツ、配信方法、タイミングを常にテストしてください。
テックタッチモデルをゼロから構築する場合、いきなり完璧な理想形を実現しようとするのはやめましょう。
まずはカスタマーライフサイクル上の重要ポイントに絞り、カスタマーと会話(タッチ)する自動プロセスをいくつか追加してみましょう。それだけでも、実は大きな改善効果を期待できます。
最初の1歩は多くのカスタマーが支援を必要とする領域にフォーカスし、小さなプログラムを構築しましょう。そこからプログラムを徐々に拡大してみてください。
有効な自動化プロセスが整ってきたら、具体的なタッチ方法を拡充していく番です。
テックタッチ手法を電子メールに依存する企業は多いです。もちろん電子メールは有効な手法ですが、一方で、カスタマーは溢れる受信トレイに疲れきっているのも事実です。最悪、送ったメールがスルーされるリスクもあります。
実際、電子メール以外にも効果的な方法が色々あります。テクノロジー進化のおかげで、コストをかけず容易に実行可能な手法も増えました。そのいくつか以下にご紹介します。
ウェビナーとは、ウェブとセミナーとをかけ合わせた造語で、オンラインで開催するセミナーのことです。コロナ禍を経て、参加者側も馴染みのある方法になりました。
あなたの会社でも、既にウェビナーを開催されているかもしれません。しかしそれは既存カスタマー向けではなく、見込み客向けのウェビナーではないでしょうか?
プロダクトの活用事例やカスタマー事例の紹介、業界ソートリーダーらのプレゼンなどのシリーズを、ぜひ既存カスタマー向けのウェビナーとして追加しましょう。
ウェビナー同様、ビデオは視覚的な関与を深める効果的な方法です。さらに、ウェビナーよりもパーソナルな内容に仕立てられるのが特徴です。
成功したカスタマーにインタビューしたり、プロダクト活用のヒントを楽しめる方法で紹介するビデオづくりを検討しましょう。
例えば最も魅力的で面白いカスタマーサクセスマネジャーをホストに迎え、カスタマーに紹介してもよいでしょう。
通勤時間や移動時間が長いカスタマーが大勢いる場合、ポッドキャストはカスタマーと繋がる優れた選択肢になります。
ビデオ同様、ホスト役をしてくれる魅力的なカスタマーサクセスマネジャーを巻き込んで、業界ソートリーダーにインタビューしたり、成功事例を紹介してもらうとよいでしょう。
パワーユーザーがいるなら、ぜひ彼らの力を活用したカスタマーフォーラムを始めましょう。カスタマー基盤がすでにしっかり確立している企業には最適な方法です。
新規カスタマーがあなたのソリューションをうまく使いこなせるようになるのを、あなたのチームを補完する形で、経験豊富な既存ユーザーさん方が効果的にサポートしてくれます。
アプリは、ソリューションに合わせたメッセージを表示するのに最適な場所です。
あるカスタマーが、プロダクトの特定部分で苦戦しているのが分かる場合、発見した時点で、すかさずやり方のお手本を紹介したり、手助けメッセージを送りましょう。
カスタマーへのアンケート調査は、各タッチポイントやソリューション内の特定アクションに関連づけて実施すると、カスタマーの行動と感情の両方を把握することができ、とても効果的です。
プロダクトライフサイクル上の重要なタッチポイントのアンケート調査を行うことで、改善が必要な箇所を確認しましょう。
コロナ禍が終息した現在、2-3時間の小イベントから、年1回数日にわたるカンファレンスまで、様々なフォーマットのイベントが復活しています。
既存カスタマーを招待し、トレーニングや夕食を提供するなどして、関係構築につながる各種イベントを活発に展開しましょう。
また、関連する業界イベントといった場も、見込み客の獲得だけでなく、既存カスタマーとの関係を深めるチャンスに繋がります。
顧客基盤に最も適したソーシャルメディアを考えてみましょう。
LinkedInとX(旧:Twitter)は、B2B領域では明白な選択肢ですが、あなたのクライアントがFacebook、InstagramまたはPinterestにいる場合は、それらも考慮しましょう。
以上、8つほどテックタッチの具体的な方法をご紹介しました。
現代のカスタマーはさまざまな情報ソースから常に情報を入手しています。こうした人たちの関心を引くには、よりクリエイティブな方法を考える必要があります。
電子メール依存のテックタッチを卒業し、上述8点の一部または全部を実施することで、より効果的な「1対多」モデルのカスタマーサクセスプログラムを開発してください。