Slackのカスタマーサクセス責任者だった2017年に、Totango主催のカンファレンスで「Slackは超簡単、働き方を変えるのは超難しい」の名言を残された ロブ・ダリウォルさん。
同セッションの内容を紹介するブログ記事『カスタマーサクセスが働き方を改革する方法 @Slack』は、約2万件のビューを記録する人気記事の1つです。
現在は Crane Venture PartnersというVCで数多くのテック企業への投資・育成に携われているロブさんが、投資家の立場で今のカスタマーサクセスのおかれた状況を俯瞰し、「厳しいけれどチャンスが隠れているよ!」と鼓舞するメッセージを発信されました。
その内容は、実践的なステップと具体的なアクションに溢れていて、ロブさんが抱くカスタマーサクセスへの期待と愛情を強く感じます。
同時に、日本の大企業でカスタマーサクセスを浸透させようと努力している方々にとって、示唆深いヒントも多くあると感じました。ということで、以下に同記事ご紹介します。
注:著者のロブ・ダリウォルさんに許可を頂き原文の和訳を紹介します
過去18カ月の間、スタートアップの取締役会が効率化をギリギリと追求し続ける中で、カスタマーサクセス(CS)チームは企業のレイオフの矢面に立たされてきた。
人員や予算の削減、雇用凍結の長期化、カスタマーサクセスのリーダー、それも時には著名人の放出が一般的になった。月次の "バーン(訳者注:会社運営に必要なコスト)" を減らして財政を改善する手段として「 AIを活用した顧客エンゲージメント」が議論されるようになった。
マクロ経済環境とテック企業の資金調達環境という両面で厳しい制約条件が継続する昨今、カスタマーサクセスチームには存続の危機が到来している。
その一方で、またとない機会も到来している。
具体的には、未だに数多くのスタートアップの役員や投資家に染み付いた誤解、つまり「カスタマーサクセスはスタートアップの収益創出エンジンにおける必須パーツではない」という根強い誤解を解消できる格好の機会が到来しているのだ。
踏まえて、以下に実践的なステップを紹介したい。
重要な点は、これらのステップはカスタマーサクセスのリーダーと実務者とが完全にコントロールできるものであること、そして長年続く誤会を解消できるものであることだ。
カスタマーサクセスチームは、その役割の性質上、社外に目を向けて仕事をしている。つまり、彼らの活動、言語、一般的な参照先は、主に自社事業の "社外" 部分に存在する。
それは理にかなっていることだ。
しかし "社内" からは、「カスタマーサクセスは、カスタマーの目標達成を支援すること ”だけ” に終始していて、自社の収益目標には連携・貢献していない」と認識されている可能性がある。
それを避けるために、取締役会、投資家、経営陣らを「社内顧客」として扱うことが得策だ。そして、彼らに馴染みのある言語、つまり収益関連の言語を使って会話しよう。
それこそが、カスタマーサクセスのリーダーや実務者にとって、収益目標との整合性をより明確に示すための簡単かつ効果的な方法なのだ。
CS言語 vs 収益言語
例えば、以下のように言い換えよう。
取締役会、投資家、経営陣は、カスタマー サクセスを「カスタマーサポート」と同類だと誤解していることがよくある。つまり、収益には直接結びつかない、本質的に反応的かつ取引処理的な機能だという誤った認識だ。
その場合、「テリトリー計画」「報告」「予測」を活用するとよい。
カスタマーサクセスのリーダーや実務者が、これらを使っていつもと違うやり方で業務を進め会話をすれば、結果として誤解を解消できる、そんな実用的な方法だ。
具体的には、
取締役会や投資家の共感を得られる 「CSテリトリー計画」の中で追跡すべき四半期目標としては、例えば以下の項目がある(但し以下に限定されない)。
*カスタマーサクセスが正式に「収益」で測定・報酬されるかどうかに関わらず、特定テリトリーの収益目標を設定、追跡、報告することは、スタートアップのリーダーシップに対し、さりげなくも分かりやすい重要指標と関連付けてカスタマーサクセスの業務を説明する方法です。
市場参入(go-to-maket)製造ラインの最後尾に位置するカスタマー サクセスは、営業プロセスから部分的、ないし完全に切り離されていることが多い。結果、価値実現の所要時間を短縮するのに必要な重要情報の大半を得られないことが多い。
例えば以下のような情報:
こうした情報の断絶があるため、取締役会や投資家は「カスタマー サクセスは収益に不可欠ではない」と誤解する。
そこで、誤解を最小限に抑えるのに役立つ、次のようなアクションをとろう。特に重要なのは、こうしたアクションは正式な承認や委任を必要としない点だ。
こうしたアクションは収益に直結する。
そして、こうしたアクションをとり続ければ、やがてアカウントエグゼクティブ、セールスエンジニア、CSMが正式な「ポッド(訳者注:共通の目標のために協力する少人数のチーム)」となり、相互利益に向け 緊密に連携するようになる。
CSの人たちの中にある「商業的嫌悪感(Commercial aversion)」は、大抵の場合、不適切な営業実務に関与したことが原因で生じる。
一方、社内で「最も売る営業担当」に定期的に接していると、CSの人には意外かもしれないが、彼らの活動とスキルの両方に、CSとの共通点が数多くあることに気付く。
具体的には、
社内で「最も売る営業担当」を探し出し、さまざまな取引段階に同行させて(ないし、可能なら営業電話の録音を聞かせて)もらうよう依頼するとよい。カスタマー サクセスはCSのスキルを磨けるだけでなく、以下のようなスキルにも触れることができる。
こうしたCSスキルとは別のスキル、特に「収益機会の特定と記録」スキルを身に付ければ、カスタマー サクセスは「営業パイプラインに高品質な機会をもたらす有意義な貢献者」として社内でより高く評価されるようになる。同時に、収益に関する社内用語への精通度も高まる。
CSリーダーは、こうした非公式のシャドウイング(訳者注:自分と異なる役割・職位の人の仕事に「影」のように同行して違った視点を学ぶ育成方法)と学習に加えて、既存または計画中の営業研修にCSチームを "便乗(piggyback)させてもらう" ことを検討しよう。特に、前述の共通スキル領域の研修であるなら、真剣に検討すべきだ。
営業チームとCSチームの研修を組み合わせれば規模の経済が働き(特に予算が限られている場合)、結果として得られる収益機会も増すため、そうした動きは正当化されるだろう。
優れた営業のリーダーは、複数の異なるチャネルを通じて定期的に社内コミュニケーションを繰り返して、チームが会社の目標に与えている影響に常に光を当てている。
営業ダッシュボード、チャート、社内タウンホールでのプレゼン、役員会議、四半期別キックオフ、会社全体が利用する社内コミュニケーションツールの活用などなどだ。
優れた営業リーダーほど、営業チームがした良い仕事の成果を習慣的に社内に共有する。
こうした成果に光を当てるコミュニケーションを定期的にとることは、自分の仕事が会社の目標および目的に直接合致しているという認識をコツコツと強化するのに役立つ。
最たる良い例は、「セールスベルを鳴らす」ことだ。
「セールスベルを鳴らす」とは、新規顧客との取引が成立するたびに、営業リーダーが会社全体に向けてその朗報メッセージを投稿・発信する行動のことをいう。
CSリーダーが営業リーダーを真似て、CSテリトリーの目標を達成した時に、社内チャネル経由で定期コミュニケーションをとることを止める者はいない。
具体的には、以下の目標達成した時:
** カスタマー サクセスが更新やアップセルの取引を担当していなくても、こうした肯定的な結果 (および関係する他の役割への功績) を共有すれば、顧客との継続的な取り組みが、こうした更新やアップセルを生み出したことを強調できる。
そして、CSリーダーなら、四半期毎の担当テリトリーのデータ(四半期毎の比較を含む)を2~3枚のスライドにまとめ、説明文を添えて取締役会の資料に差し込もう。必要なら、ぜひ取締役会で同スライドをプレゼンし、質疑応答にも積極的に応じよう。
カスタマーサクセスのリーダーと話していてよく耳にするのは、営業組織のリーダーと異なり、「自分たちは経営会議に呼ばれない」ということだ。
そんなCSリーダーに言いたい。
“収益”という言語を取り入れ、”テリトリー”の観点から業務を行い、積極的に営業パイプラインに接続し、一般的な営業スキルを磨き、価値ある新しいスキルを身に着け、定期的な社内コミュニケーションに取り組むべし。
そうすれば、CSリーダーは、リスクでさえある経営層の誤解を正し、極めて重要な意思決定のテーブルで発言権を獲得する、それを正当化する強い根拠を手にできるのだ。