現役のカスタマーサクセスリーダーである講師陣のもと、受講生自身が自社の実務に即した実践的な「カスタマーサクセス計画大綱」を完成させる講座『実践カスタマーサクセス』。
修了後、それぞれの現場でどのような成果が生まれているのか、受講生のリアルな声をお届けします。本記事では、2022年4~8月に開催した『実践カスタマーサクセス』第3期を受講された、第一生命保険の荒木貴幸さんのお話をご紹介します。
前年の2021年に、新しいアフターサービスの形を考える検討が始まりました。
生保業界では、全国に何万人といる営業員(生涯設計デザイナー)が1人で営業とアフターサービスの両方の役割を担ってきました。けれど1人であらゆるケアをやりきるのは難しい面があるとか、退職後に引き継いだ後任者がお客様と関係構築するには時間を要するなど、アフターサービス領域にはいくつかの課題を認識していました。
専業の生涯設計デザイナーを中心とする点は変えず、むしろその強みを活かした、より組織的なリテンションモデルをつくる必要があると考えたのです。
検討が進むと「やっぱりカスタマーサクセスが必要だ」となり、2021年10月頃にカスタマーサクセスについて検討する組織横断プロジェクトが立ち上がり、私も参画しました。
2022年に入り、とにかく何か始めたいけれど、何もない状態で何からどう手をつければよいのか分からない。一体どうしようかと大変悩んでいました。
弘子さんの書籍はもちろん、当時手に入ったカスタマーサクセス関連の書籍をすべて読みました。けれど取っ掛かりの糸口がつかめない。そんな時に、ネットを検索していて『実践カスタマーサクセス』を見つけました。
生保事業は世界的にも独特なビジネスモデルなので、一般的なカスタマーサクセスの手法をそのまま取り入れることはできません。基本的な理念や基礎知識を学び、踏まえて自分たちで自社への適用方法を考える必要があると思っていました。
その点で、実践カスタマーサクセスは基礎を学べる。これに参加することで、カスタマーサクセスを始める糸口をつかみたいと思い、予算をとって同僚と一緒に3人で受講しました。
修了直後に、コンタクトセンターが中心となって部門横断チームを立ち上げ、カスタマーサクセスマネージャー(以降、CSM)を30名ほど配置して活動を始めました。
CSMの役割は、非対面チャネルでのアフターサービス領域のケアです。
具体的にはお客様への挨拶、先回りした手続き案内やニーズに基づく情報提供などです。CSMは本社の専属担当者と位置づけ、生涯設計デザイナーと共にお客様をサポートする体制をとりました。
このCSMの活動に対するお客様や生涯設計デザイナーたちの声が好評だったので、翌年にはコンタクトセンター統括部に100名ほどの下組織を整えてカスタマーサクセス活動を続けました。当初はオンボーディングと関係構築が中心でしたが、2023年からはエクスパンションの要素を入れてLTV(顧客生涯価値)を上げる活動にも取り組みました。
結果、一定の拡販効果が認められ、2024年4月から400名の「カスタマーサクセス部」が新設されました。内訳は、全国に6拠点・各50名ほど配置されたCSM、そしてCSMのマネジメント層、CS Ops(オプス)のような企画・推進支援チーム、品質チームという体制です。
お蔭さまで、お客様から「非対面でも本社の人からサポートを受けられて安心感が高まった」「必要な手続きを事前に案内してもらえて助かった」という声を多数頂戴しています。
そうした声は数字にも表れ、解約率が改善する兆しが見えています。
また、CSMが関係構築して得た情報を営業職員へ伝え、生涯設計デザイナーが対面コンサルティングをすることで、新しい保険契約への切り替えや追加の契約などに繋げる組織連携も進めています。
まだ件数は多くないですが、営業成果があがった現場からは「CSMに情報提供してもらえ助かる」という声が届いています。
私たちは、SuccessGAKOで学んだ「カスタマーサクセスとは何か」という基本の考えを組織にしっかり浸透させることに力を入れています。というのも、カスタマーサクセス部は新設・急拡大した組織。カスタマーサクセス経験者は1人もいないし、過去に経験した仕事や組織文化も異なるメンバーが集まった組織だからです。
SuccessGAKOで学んだ教材を活かし、仕事のベースとなる考え方をメンバーに伝えています。今では「カスタマーサクセスは意義がある、とてもやり甲斐のある仕事だ」というマインドが醸成されつつあると感じています。
実は、CSMがお客様の飼っている犬の名前を記録し、次にコンタクトしたときに会話に入れたことで関係が一気に深まったというエピソードがあります。そうした「お客様と関係を深める活動をCSMがリードしよう!」という雰囲気が生まれています。
もちろん、生涯設計デザイナーはそうしたことをずっとしてきました。でも残念なことに、情報として社内に蓄積されていない。CSMが聞いてCRMに蓄積することで、組織的にお客様理解がより深まり、踏まえて次のコンタクトを設計できる。こうした関係構築の深め方はとても良いなと思っています。
将来的に、お客様との通話記録を全部AIに読み込ませてニーズのスコアリングモデルを作り、それをCSMの担当顧客に適用することで、よりパーソナライズされたコミュニケーションを都度取れるようにできないかと思案しています。
CSMが生涯設計デザイナーへ情報連携するリード数、そしてリードから実際に生命保険の成約に至る件数について、今の体制に基づいた目標値を定め、実績を可視化しています。今のところ、目標を上回る水準で順調に推移しています。こうしたデータを経営に定期的に伝え、合意をとりながら進めています。
経営の反応はこれまでのところポジティブです。今後の見通しについては、シミュレーション通りいくのかどうか、しっかり検証しながら進める必要があるという姿勢です。
2024年度末までにCSMが全顧客の約10%をカバーする体制を予定しています。その先数年かけて、「全顧客カバー」を目指しています。それには、いくつか大きな課題を解決しなければなりません。
現在、CSM1人あたり約2000名の顧客を担当していますが、非対面で効果的なコミュニケーションをとるには、顧客データを完備してデジタル接点の割合を増やすことが必須です。また 1人の担当顧客数も3倍かそれ以上に増やす必要がある。それにはデータ基盤を充実させることが必須です。
このように、全顧客をカバーするには大きな投資が必要です。1つひとつ、経営と検証・議論しながら進めていく予定です。
迷われている方には、ぜひ参加することをお勧めしたい、というのが私の本音です。
何より、カスタマーサクセスの基礎を学べます。私は修了してもう3年経ちますけど、いろいろな検討を進めている今でも、教えていただいたことが私の思考の基礎になっています。
他社の方々とコミュニケーションをとりながら自分の考えをまとめ、計画に落としていけるのもよかったです。皆さん立上げの苦労を知っている方ばかり。「こういうことに悩んで、こうやって解決したんだ」と、そのまま取り入れられないけど、ヒントになることをたくさん教えてもらいました。
最初は何が取っ掛かりの糸口になるか分かりません。迷っているなら受講をお勧めします。