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    2025.05.23

    "ワオ!"体験を極める:リボリュートの急成長に見るカスタマーサクセスの本質

    英国発のフィンテック企業、Revolut(以降「リボリュート」)は、2015年の創業からわずか10年で、世界5,250万人のユーザーを獲得。直近2024年度の売上高は40億ドル(約5,800億円)で、前年比72%増という急成長を今も続けています

    急成長の鍵はやはり、徹底したカスタマーサクセスの実践です。具体的に見ていきましょう。

    本稿のポイント

    • リボリュートは2015年創業のフィンテック企業で、売上高40億ドル(約5,800億円)の規模ながら、前年比72%増という急成長を今も続けています
    • 同社は「99%完成しても顧客に届き愛されなければ0%」という信念で、顧客にワオ!体験を届けることを最重視しています
    • プロダクトオーナーは大きな責任を与えられ、顧客の生の声に直接耳を傾けて製品の価値を顧客に届けることに強いオーナーシップと実行力を持って挑みます
    • 経営トップがすべての画面デザインを直接レビューするなど、最高の顧客体験を追求する文化が全社に浸透しています
    • 同社の急成長は単なる技術力ではなく、顧客体験と成果に対する徹底したこだわりと、それを可能にする組織的な仕組みに支えられています

    1. はじめに

    本題に入る前に、日本であまり馴染みのないリボリュートについて簡単にご紹介します。

    リボリュートは、2015年に英国ロンドンで生まれたフィンテック企業です。元投資銀行家だった創業者のニコライ・ストロンスキー氏が、従来の銀行が提供する国際送金や為替の高コスト構造や不便さに着目し、極めて低コストで透明性の高い手数料体系を発案しました。

    現在、モバイルアプリを中心に、個人向け・法人向けの銀行口座、多通貨対応の決済、送金、資産運用などの多様なサービスを統合した「スーパーアプリ」を、実に世界90か国以上で展開しています。2024年末時点で全世界に個人ユーザー約5,250万人、法人ユーザー約50万社を擁しています。

    設立わずか3年で評価額10億ドルを超えるユニコーン企業に成長。2025年現在の評価額は450億ドル(約6.5兆円)。直近2024年度の売上高は40億ドル(約5,800億円)、前年比72%増という急成長を今も続けています。

    本稿は、リボリュートのグローバルプロダクト責任者である Dmitry Zlokazov氏へのインタビュー『How Revolut trains world-class PMs』の内容を基に、筆者によるカスタマーサクセス視点の考察を紹介します。

    2."ワオ!"体験への執着:顧客を熱狂させるプロダクト

    リボリュートの最たる特徴は、顧客に「ワオ!」と言わせるプロダクトの構築に心血を注ぐ点です。

    実際、これはフィンテック分野で見過ごされがちな点ですが、同社は「機能が99%完成しても、顧客に愛される(lovable)プロダクトでなければ0%に等しい」という信念を持っています。

    同社にとって、ただ「便利で速くて手数料が安い」では不十分です。ユーザーが「私たちのことを本当に気にかけてくれている」と感じるレベルが同社の目指すゴールです。

    例えば、同社はサービス開始時に多通貨カードを提供しました。当時の銀行は、旅行者に対して法外な手数料やひどい為替レートを課していた中、同社は、手数料を節約できることに加え、為替レートなど取引の透明性と利用の簡便性を追求したことでユーザーの信頼を獲得、取引量が急増しました。

    同様に、P2P送金、多機能の貯蓄口座、クリプトの即時換金・即時利用など、ユーザーが「ワオ(正にこれ)!」と唸るプロダクトを提供し続けています。

    同社が執着する「ワオ!」プロダクトとは、優れた機能に加えて、美的感覚やスムーズさなどプロダクト体験の細部にこだわることで、ユーザーが「心から大切にされている」と感じられる、期待を超える体験と成果を提供するプロダクトのことなのです。

    3.強いプロダクトオーナーシップ:顧客への深い共感と徹底的な顧客理解

    リボリュートでは、プロダクトマネージャー(PM)を「プロダクトオーナー」と呼び、彼らのオーナーシップを最重視します。

    プロダクトオーナーは、担当する製品、事業、顧客に対しエンド・ツー・エンドの責任を与えられます。つまり、彼らはプロダクトの誕生から顧客が成果を達成するまでの責任者であり、正に「ミニCEO」「ローカルCEO」として機能します。

    責任が大きい分、「Get Things Done(成し遂げる)」を何より重視し、自ら手を動かして関係者を巻き込み、顧客に価値が届くまでやり抜きます。

    そんなプロダクトオーナーの拠り所は、「顧客への深い共感」と「徹底的な顧客理解」。そのために顧客との直接対話が不可欠と考え、同社は「顧客の生の声を聞き取る仕組み」を構築しています。

    具体的には、5,000万人以上の顧客基盤(ユーザーパネル)を基に、プロダクトオーナーやデザイナーが同ユーザーパネルに容易にアクセスできるツールを整備しています。このツールをクリックすることで、想定したユーザーにインタビューや調査、デザインテストを実施することが可能です。

    さらに、同顧客基盤を活用することで、新しいプロダクトをローンチする際、瞬時に大きなトラクションを獲得します。例えば、共同口座サービスをローンチした直後には、100万人以上のアクティブユーザーを獲得しました。

    このように、顧客を深く理解するための仕組みを整えることで、顧客に対しエンド・ツー・エンドの責任をもつPMが顧客の生の声を踏まえてそのオーナーシップを発揮することができるのです。

    4.経営層の顧客体験への異常なまでのコミットメント

    数千億円の事業規模に成長した現在も、リボリュート創業者のニコライ・ストロンスキー氏(現CEO)とヴラッド・ヤツェンコ氏(現CTO)は、公開される自社アプリの画面すべてのデザインを自らレビューします。

    同社は非常にフラットな組織で、創業者自身がプロダクトの細部に深く関与します。具体的には、毎週全チームとプロダクトレビューを行います。つまり、プロダクトオーナーはCEOやCTOに直接進捗を報告して助言を得る機会があります。

    一見、マイクロマネジメントとの印象を抱きがちですが、実際はそうではありません。

    むしろ、チームに自律性(autonomy)が与えられ、同社の急成長の原動力になっています。なぜなら、経営が全チームの活動の詳細を把握し健全性を確認しつつ、必要な場合にのみ介入するため、品質を担保しながら驚異的なスピードで多数のプロダクトを開発・リリースすることが可能だからです。

    加えてより重要なのは、「最高の顧客体験(CX)を追求する」姿勢を経営自らが率先して体現することで、組織全体に文化として浸透させる効果があります。

    このように、経営トップ自らが顧客視点でプロダクトの良し悪しを評価・判断することで、組織全体が「顧客に愛されるプロダクト作り」に集中できる環境を整えているのです。

    5.結論:モノやサービスの(品)質より、顧客の体験・成果の質向上にこだわるべし

    ここまで読まれた皆さんなら、リボリュートが急成長する理由は、プロダクトの機能や技術面が優れている「だけ」でも、サービスの質が高い「だけ」でもない、ということをお分かりと思います。

    注目すべきは、その背景にある、最高のプロダクト体験「ワオ!」への執着、そのための深い顧客理解・共感を大切にする姿勢、それを実行可能にする仕組み、そして、それらを支えるリーダーシップです。

    多くの日本企業にとって、すべてを真似することはできなくても、ユーザーの生の声を聞き取る姿勢や仕組みなどは参考になりそうです。まずは、カスタマーを理解し「ワオ!」を追求する姿勢、そのためにどのようなカスタマーサクセス活動をできそうか検討してみてはいかがでしょうか。

    なお、「ワオ・モーメント」の重要性とその届け方について、記事『必勝オンボーディング:チャーンされない”ワオ・モーメント”の作り方』で解説しています。ぜひ併せてご参照ください。

    カスタマーサクセスに挑戦する人が、知恵と勇気と仲間を手にする実践者コミュニティ「SuccessGAKO」

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