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    必勝オンボーディング:チャーンされない "ワオ・モーメント" のつくり方

    オンボーディング活動からカスタマーサクセスに取り組む企業は多いです。

    実は、「私達のオンボーディング、間違ってました」と告白される SuccessGAKO(サクセス学校)受講生さんはとても多いです。大半は、ベンダーが決めた「使い始めてもらうのに必要な手順」をオンボーディングと考え、実際そうした活動を実施してきた方たちです。

    残念ながら、それでは不十分。どころか、チャーンリスクの高い危険な「しくじりオンボーディング」ですらあるのです。

    では一体「チャーンされない必勝オンボーディング」とはどのようなものでしょうか? 本稿は、成果をだすカスタマーサクセスに必須の 必勝オンボーディングについて解説します。

    「オンボーディング」はメチャクチャ大事

    まず最初に、「オンボーディングとは何か?」を簡単にさらいましょう。

    カスタマーサクセス文脈において用いられる「オンボーディング」とは、カスタマージャーニーの中で契約直後に始まり、カスタマーがプロダクトやサービスに価値を感じて継続的に利用したいと思う状態になるフェーズの呼称です。

    実は、オンボーディングはカスタマージャーニーの中で最も重要なフェーズです。

    言い方を変えると、オンボーディングに失敗すると致命傷になります。なぜなら、オンボーディングの良し悪しがチャーンに直結するほどその影響がとても大きいためです。

    シリアルアントレプレナーで投資家のデヴィッド・スコック氏は、複数のSaaS事業を起業してエグジットに成功した後に数多くのSaaS事業の経営指導してきた自身の経験を踏まえて、必ずチャーンに至る2大理由 があるといいます。

    SaaS事業を営む数多くのポートフォリオ会社と一緒に仕事する中で、私は、他のどんな理由よりも確実にチャーンを招く2大事由を発見しました:

    1)カスタマーのオンボーディングが首尾よく行われなかった
      (Failure to successfully onboard)

    2)サービスの契約更新を強く推すハードユーザーがいなくなった
      (Loss of the champion)

     ※詳細は記事『チャーンに至る2大理由』を参照ください

    彼が、オンボーディングの失敗は確実にチャーンを招く2大事由の1つだ、というその理由のポイントは以下です。

    • オンボーディングは通常、プロダクトの採用を決めたばかりのカスタマーがプロダクトに最も期待を寄せるタイミング
    • プロダクトについて学ぶために時間と労力を割く準備があり、使いこなしたいという意欲がマックスになっているタイミング
    • 仮に、そんな絶好のタイミングでの対応をしくじり期待に応えられなければ、カスタマーは「思ったほど良くない」と一瞬で見限る
    • 一度そう思われてしまうと、もう一度試してみようという前向きな気持ちに戻すのはほぼ不可能

    実際、オンボーディングはジャーニーの中で最もサクセスの軌道に乗せやすいタイミングです。

    下図は、縦軸が「プロダクトを継続活用したい」というカスタマーの意欲、横軸は契約から契約更新までの時間軸です。赤い線はよくある推移の例示です。ここまで極端に落ち込まなくても、一般的に継続活用への意欲は時の経過と共に下がります。

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    順に見ていきましょう。

    • 契約直後は、カスタマーの意欲や期待値が最も高いタイミングです。
    • その後、成果が思うように出せず価値を見いだせないと、使い続ける意欲は急激に低下します。そうこうするうちに「契約したのは間違いだった」という判断にいたります。
    • この時点でカスタマーは解約の意思決定をしています。ベンダーはまだそれを知りませんが、仮に知ったとしてもポジティブな変化をもたらすことはほぼ不可能です
    • さらに時を経てからベンダーへ「解約します」と連絡します。この時点ではカスタマーの解約意向は既にかたまっており、ベンダーとしてはなす術のない手遅れな状態です

    下図で改めて確認してみてください。

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    継続利用への意欲は契約直後が最も高く、期待した成果がでなければ意欲は下落し、更新日を迎える頃には解約意向をくつがえせる可能性はほぼゼロです。

    こうした状況にならないために、カスタマーには契約直後に価値を実感してもらうことが大事です。そうできなければ、軌道修正する難易度は時の経過と共に高まる一方です。

    成功の鍵は「ワオ・モーメント」と「タイム to バリュー」

    では、オンボーディングに失敗しないよう、カスタマーに価値を実感してもらうにはどうしたらよいでしょう? 押さえるべき重要な概念は以下2つです。

    • 1)ワオ・モーメント
    • 2)タイム to バリュー

    1)ワオ・モーメントとは

    ワオ・モーメントとは、「カスタマーが心からプロダクトの価値を実感する瞬間」です。

    単に「プロダクトが使えるようになった!」という話ではありません。カスタマーがプロダクトの真価を実感し「凄くいいね!」「もっと使いたい」という想いが心から沸き上がる瞬間、それがワオ・モーメントです。

    そして、必勝オンボーディングにはワオ・モーメントが必ず組み込まれています

    よくある「しくじりオンボーディング」の1つは、「使い始められる状態」をゴールに設定し、プロダクトの主要機能や操作方法を伝えることに終始するものです。

    その結果は、どうなると思いますか?

    多くの場合、「これを使うと私の業務は楽になるの・・?なんか面倒だな」と感じるカスタマーが量産されます。人は、不慣れなことを初めてする時には負担感を覚えるからです。

    その時、「わ、これは凄い!」と感じる嬉しい体験が同時にあれば負担感は相殺されます。しかし、そうしたポジティブ体験がなければ、ただ「面倒」という負担感だけが残ります。

    お分かりですね、「使い始められる状態」を目指すオンボーディングは「しくじりオンボーディング」なのです。

    結論:オンボ―ディングは最中にカスタマーが ワオ・モーメント を必ず実感するよう設計せよ

    2)タイム to バリューとは

    タイム to バリューとは、「カスタマーがワオ・モーメントに到達するまでの時間」です。

    オンボーディング中にワオ・モーメントを実感してもらうことは必須な上で、そこに至るまでの時間、つまりタイム to バリューを限りなく短縮させることが、必勝オンボーディングにおいて非常に重要です。

    それは、「遅いよりは早い方がいいね」という程度の話ではなく、ビジネスの成否に影響するほど重要なことです。

    なぜかというと、タイム to バリューは初回更新の成否と如実に相関するためです。

    書籍『カスタマーサクセス』(英治出版、2018年)の中で、「オンボーディングの期間と初回更新の可能性には、はっきりとした相関関係がある」と明記されています。

    欧米では、タイム to バリューを具体的な指標に落として計測し、その数値を短縮することに取り組んで成果をだしたという事例を公表する企業が数多くみられます。

    また、タイム to バリューとオンボーディングの成功との間に明快な相関関係を認識したことで、計数管理を始めた日本企業も存在します。

    つまり、プロダクトの価値をカスタマーにいち早く実感してもらえるかどうかが、オンボーディングの成否を分けるのです。

    結論:オンボーディング中の タイム to バリュー を測定し短縮するよう常に努力せよ

    オンボーディングのゴール(KPI)を設定する

    ここまで、オンボーディングとは「カスタマーがプロダクトやサービスに価値を感じて継続的に利用したいと思う状態になるフェーズ」のことであり、最中に「ワオ・モーメント」が確実に実感され、その「タイム to バリュー」は最短化するよう設計することが必勝の要だと解説しました。

    加えて、あらかじめオンボーディングのゴール(KPI)を設定し、実行した結果を測定・評価することで、設計したオンボーディングの有効性を評価・改善することが大切です。

    では、オンボーディングのゴール(KPI)は何にすればよいでしょう?

    ここで「オンボーディングのKPIは XX です!」と具体的にお示しできれば良いのですが、残念ながらそれは不可能です。理由は以下の通りです。

    • オンボーディングのゴールに設定すべき項目と水準は会社によって異なる
    • それらは仮説を立てて答え合わせを繰り返すことではじめて見出すことが可能

    そうなんです、ゴール(KPI)を特定することはそれほど簡単ではありません。他社のKPIをそのまま取り入れても絶対に上手くいきません。自社で時間をかけて仮説検証を繰り返す必要があります。

    但し、仮説を設定する時の秘訣はあります。無駄な試行錯誤を避けるため、仮説は以下3点を踏まえて設定しましょう。

    秘訣1)客観的で解釈の余地がない指標にする

    1つ目は、客観的で解釈の余地がない指標にする、です。

    「価値を感じてくれました」「バッチリです!」といった、担当者の主観に依存する項目は厳禁です。オンボーディングの完了を客観的に判断できるよう、人数、割合、件数といった数字に示せる項目を設定しましょう。

    判断する項目を決めたら、同時に合否判断の水準も設定します。その後の運用を見据え、組織内の誰もが納得する、明確で客観的な項目と水準を設定することがとても大切です。

    秘訣2)ワオ・モーメントにフォーカスする

    2つ目は、ワオ・モーメントにフォーカスする、です。

    後からキャッチアップ可能な体験や成果はきり分けて、まず最初に追求するワオ・モーメントに絞りましょう。どういうことかというと、プロダクト価値の中には、長く使い続けることで初めて体感できる価値や実現する成果があります。それをワオ・モーメントに設定すると、タイム to バリューが無駄に長くなります。オンボーディング最中に不可欠なワオ・モーメントは何か?を突き詰めることが大切です。

    秘訣3)目標期日を設定する

    3つ目は、目標期日を設定する、です。

    「遅すぎるオンボーディングは失敗」という認識が共有された組織はとても強いです。1ヶ月なら1ヶ月、3ヶ月なら3ヶ月と期限を定め、それを超えたらそのオンボーディングは失敗だという認識を組織全体でもちましょう。

    オンボーディングのゴール到達に向けて

    オンボーディングは次の5つのステップで実践します。

    1.  オンボーディングのゴール(KPI)を設定する
    2.  ゴール達成までの障害を洗い出す
    3.  障害を乗り越える施策を考えて実施する
    4.  カスタマーの状況をモニタリングする
    5.  課題を察知したら常に先手をうつ

    「1.」は前述の通りですので、「2.」について補足します。

    オンボーディングでつまづいたカスタマーを担当した経験をもつ人は、まず自分の経験から実際に起きた事実を洗いだしましょう。加えて、他の経験者に話を聞いて障害リストを拡充させましょう。

    注目すべきは、ユーザーさんにとっての「摩擦(Friction)」と「懸念(Concern)」です。

    • 摩擦は、「上手くできず脱落」レベルのことはもちろん、「できるけど面倒に感じる」レベルにも注目します
    • 懸念は、「怖い/心配なのでやめておく」レベルはもちろん、「やるけど内心ちょい不安」レベルのものにも注目します

    何より大切なのは、「ここで摩擦や懸念があるはずない」という思い込みは捨てて、カスタマーになりきって考えることです。

    インストールできない、ログインできないなど、利用開始の前段階でつまづく人もいます。そもそもパソコン操作に慣れていない人もいるでしょう。そうした1つひとつを丁寧に洗い出しましょう。

    そうして洗い出した障害は、施策を検討できる粒度にまで分解しましょう。

    例えば 「ログインできない」という粒度で洗い出せれば、「ログインをもっと簡略化できないか」などの施策を検討できます。

    ここまでくれば、あとは「3.」以降のステップを進めるだけです。3~5はさまざまな実験を永続的に繰り返すステップです。さらに、定期的に1~2も見直すことで、必勝オンボーディングは磨かれ完成度を上げていきます。

    以上、必勝オンボーディングを実践するコツとステップを解説しました。自社の今のオンボーディングプロセスを見直したとき、改善余地はありそうですか?YESならいよいよ次は、皆さんが実行する番です!

    【補足】

    本稿は、SuccessGAKO(サクセス学校)の人気講座である『認定カスタマーサクセス』の学習コンテンツ(第4章:オンボーディング)の一部です。同講座では、上記内容の他に、ワオ・モーメントの例や見つけ方、オンボーディングのゴール例、実践ステップの詳細なども学びます。カスタマーサクセスについての体系的な知識を学び直したい方、ぜひ受講をご検討ください!詳しくは、下記(↓)をご覧ください。

    カスタマーサクセスに挑戦する人が、知恵と勇気と仲間を手にする実践者コミュニティ「SuccessGAKO」

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