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    2026.06.27

    デジタルタッチを整備し顧客800社をカバーして解約率37%(前年比)改善、拡販にもつなげ売上貢献

    スケールするカスタマーサクセス、略して「スケールCS」とは、人に依存しないアプローチを取り入れることで、すべてのカスタマーを成功に導き、自社の事業成長が加速するカスタマーサクセスです。

    カスタマーサクセスに取り組んで数年たち、ツールやヘルススコアを導入しているが、日々のカスタマーサクセス活動はCSM(人)に依存するという企業はとても多いです。それ自体は決して間違っていませんが、人がカバーできる範囲に限定される活動は「スケールCS」とは一線を画します。

    ウイングアーク1stの杉山真一氏は、担当プロダクトのお客様はユーザー数が少なくて契約金額も小さい企業が多いことから解約率が高止まりしていたことを課題視し、SuccessGAKO(サクセス学校)主催の「スケールCS」講座を2024年に受講しました。学びを踏まえて、スケールする方法でカスタマーサクセス活動を推進し、大きな成果を上げています。

    本稿は、カスタマーサクセスの実践を通じて自社を変え、顧客に大きな価値をもたらした挑戦者を表彰する『カーディ賞(Cardi Award2025』に杉山氏がエントリーした発表の全容を、一部編集してお届けします。

     

    1. 本記事のポイント

      • 契約金額が小さくユーザー数の少ない顧客層の解約率改善を目的に、デジタルタッチを軸としたスケールCSに取り組み成果を出したウイングアーク1stの事例
      • 大型顧客はヒューマンタッチ、小規模顧客はデジタルタッチと位置づけ、セグメンテーションに基づくカスタマーサクセスの戦い方を明確にした
      • ジャーニー、指標、顧客ステージ、ヘルススコア、配信コンテンツを整備し、必要な顧客に必要な情報を届ける仕組みを構築
      • 顧客のゴールのカタログ化に取り組み、プロダクト活用の目的や解決策を可視化して公表する「MotionBoard:解決のカタチ」サイトを公開
      • こうした取り組みの結果、担当プロダクトの解約率が大幅に改善し、インサイドセールスと連携したエクスパンション施策にもつながった
      • スケールCSの実現には、長年のデータ・コンテンツ・顧客理解の積み重ねと、全体設計を強く推進するリーダーの存在が不可欠である

     

    2. 発表全容

    ご挨拶と自己紹介

    皆さん、こんばんは。ウイングアーク1stの杉山と申します。

    私は2024年にSuccessGAKO(サクセス学校)の「スケールCS」講座を受講しました。この発表のお題「スケールCSは一夜にしてならず」は、スケールCS講座で学んだキーワードです。

    副題に「デジタルタッチ実践までのあれこれ」とある通り、内容は弊社のデジタルタッチの取り組みについてです。弊社が実践するスケールCSは、私1人の力だけではなく、しかも長い年月をかけて今の形になりました。その経緯を、今回、私がウイングアーク1stを代表してお話しします。

    杉山02

    発表内容の要点

    私がスケールCSの受講を始めたのは、ちょうど1年前の202411月でした。

    当時、弊社のカスタマーサクセスはハイタッチ中心でした。ようやくデータが整備・可視化され始め、「デジタルタッチを今後シッカリやっていこう」という、スケールCSの初期段階でした。

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     課題は、弊社のプロダクトの1つ、「MotionBoard(データ活用BIのダッシュボードツール)」の解約率が高止まりしていたことです。ユーザー数が少なく契約金額も小さいお客様が非常に多く、その層の解約率が非常に高いことから手をつけづらい状態でした。

    スケールCS講座での学びを踏まえて、私たちが行動したことは3つです;
    1
    )まず、スケールCSの本格運用に向け、セグメンテーションの戦い方を明確にしました
    2
    )次に、デジタルタッチを推進するための基盤を構築しました
    3
    )そして、「顧客のゴールのカタログ化」を実践しました

    3つ目の「顧客のゴールのカタログ化」とは、お客様が自社のプロダクトを使って何を達成したいのかを言語化して運用するというものです。これはとても大変でしたが、最終的に「MotionBoard:解決のカタチ」サイトとして公開することができました。

    そして現在は、デジタルタッチを本格運用しています。

    既に、解約率の改善効果が出ています。具体的には、MotionBoardが37%、SVF Archiverは54%と、過去に比べて解約率が大幅に改善。また、インサイドセールスと連携したエクスパンション施策にも挑戦するなど、収益インパクトという形で成果が出ています。 

    杉山03

    デジタルタッチ実践までのあれこれとは

    まず、デジタルタッチの本格稼働に向けて、セグメンテーションの戦い方を明確にしました。 

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    スライドの左側は、「MotionBoard」のお客様約800社をNRRの大きい順に並べたパレート図です。

    セグメントを2つに分け、グレーのセグメントSABに分類された大型のお客様はヒューマンタッチメイン、オレンジのセグメントCはデジタルタッチメインで対応すると決めました。金額ではセグメントSAB77%を占める一方、お客様の数ではセグメントC64%です。

    スライド右側は、弊社の組織図です。CS部は、セグメントS・A・Bを担当するCSMの部隊です。CMK(Customer & Market Knowledge)部はデジタルタッチの推進、コンテンツ制作、そしてトレーニングを担当します。私は、このCMKの責任者です。 

    3-scale-cs-history-digital-contents

    お題の「一夜にしてならず」ですが、これはスケールCS講座で学んだ、「スケールCSに必須の『データ』は一夜にしてならず」のことです。これは本当にその通りで、「さあ、今日からデジタルタッチをするぞ!」と言って直ぐに実践できることでは絶対ない、と私も思います。

    私たちがスケールCSを実践できた背景には、数年前からいろいろな人・部門がそれぞれ試行錯誤してきた取り組みがあり、それが今につながっているといえます。例えば、コンテンツを改善しましょうとか、データをちゃんと用意しましょうという取り組みが、連携していないながらもいろいろ実施されてきた過去があります。これは重要な点です。

    例えば、スライド右下は、2020年に開催した弊社のイベントで、弊社のカスタマーサクセスの取り組みを紹介した時のものです。ヘルススコアを管理してお客様に効果的なアプローチをしましょうという話をしました。つまり、5年前からヘルススコアなどデータを意識してきました。

    スライド左下は、カスタマーエデュケーションとしてのeラーニングの仕組みについてです。コロナ禍前はなかった仕組みですが、コロナ禍でオフラインの講師トレーニングが実施できなくなり、eラーニングを準備しました。

    こうした取り組みが、過去数年間、社内のあちこちで複数動いてきました。

    1つ、具体例を紹介します。 

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    2022年のことですが、お客様から、マニュアルが分かりにくい、検索しても情報が出てこない、製品が使いづらい、といった声が非常に数多く寄せられました。

    そこで、こうした声に対応すべく、ユーザーに提供するヘルプページ内のトップに「使い始めてみよう」というコーナーを用意しました。特に、使い始めた頃は「どう検索したらいいかも分からない」というユーザーがいると思うので、そうしたユーザーでも分かりやすいように、必要な情報を丁寧にまとめました。

    こうした細かい取り組みを、今まで数多く実施してきました。

    ヘルススコアやデジタルコンテンツが充実し、本格的にデジタルタッチを始める機運が高まってきたタイミングで、私は同僚と2人でスケールCS講座を受講しました。

    5-digital-touch-team-leader-successgako

    初回の講義で、小泉先生から「ハイタッチは成功して当たり前です」と言われました。その言葉を聞いてハッとし、お尻に火がついたことを今でもすごく鮮明に記憶しています。

    同じタイミングで、弊社の藤原さんがデジタルタッチを推進するリーダーとしてCMK部に参画してくれました。スライドに藤原さんの顔写真を紹介しています。今日も会場に来てくれています。

    彼女が猛烈な勢いでスケールCSを実践してくれました。近くにいるのでよく分かるのですが、「ちゃんと睡眠とれているかな」と不安に思うくらい、めちゃくちゃ頑張ってくれました。

    具体的に実施したことは、どれも泥臭いことばかりです。

    6-digital-touch-implementation-framework

    ジャーニーを作り、指標を設定し、ターゲティングのための顧客ステージを決め、ヘルススコアのロジックを決めて、定量的にステージ判定できるようにしました。そして、必要な人に必要なコンテンツをEメールなどで届ける。こうした本当に地道なことばかりです。これら11つを、藤原さんがものすごく丁寧に、ものすごいスピードで次々と実行してくれました。

    その過程で発見したことがあります。私も藤原さんも、プリセールスやCSMとしてお客様対応をしてきた経験があるため、ターゲティングですとか、メールを送るタイミングなどについて、ものすごく解像度高い仮説を立てられました。「デジタルタッチだからお客様を知る必要がない」と思ったなら、それは全く真逆の勘違いです。お客様のことを本当に深く理解していないと良い仮説は立てられないと、改めて、私はものすごく実感しています。

    スケールCSの活動はいろいろやりましたが、中でも1つ敢えて分かりやすいものを紹介するなら、「お客様のゴールのカタログ化」です。 

    7-motionboard-solutions-catalog-site

    「お客様のゴールをカタログ化する」って、言うと簡単ですけれど、弊社のプロダクト「MotionBoard」はユーザーによって用途が異なるため、カタログ化を諦めかけていました。けれど、講義を聴いて、やっぱり必要だなと思い、「やりましょう、藤原さん!」と相談したところ、彼女がメンバーと一緒にものすごい勢いで作ってくれました。

    コンテンツ制作部隊も巻き込んで、「MotionBoard:解決のカタチ」サイトをリリースできました。協力してくれた皆さんに感謝しています。お客様もこのサイトを見て、「こんなことできるんだ」と発見してくれるといいなと思っています。

    スケールCS活動の結果です。

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    スライド左手のチャートの折れ線は過去2年間の解約(チャーン)推移です。グレーが解約予測、青が実績です。今年に関しては、予測の半分あたりで推移していて、「解約を減らす」というポジティブな結果を出せています。

    デジタルタッチを追求すると改めて思い知ることがあります。それは、お客様の体験に「人」が介在しない分、製品とコンテンツがお客様の体験の中心となるので、製品自体がより良くならないと解約されてしまうということです。製品の使いづらい部分はどんどん改善していく必要があります。

    このこと自体は、ずっと前から言い続けていますけれど、今回改めて、開発と手を繋いで目指すところに向かって進むには、何か共通の数値目標が必要だと実感しました。そこで、顧客提供価値と事業成長を両立するようなKPI/指標を設けていこうよ、という話を戦略部門と進めているところです。

    杉山04

     

    発表内容のまとめ

    以上の内容を、4つの視点でまとめます。

    9-scale-cs-project-conclusion

    まず「挑戦」です。人に依存せずデータを頼りに、私たちの製品を『好き』になってもらうための情報を届けるデジタルタッチ基盤を構築しました。そして、各部門単位で動いていた施策を連携させました。

    「変化」としては、プロダクトとデジタルコンテンツが中心となる非ヒューマンタッチのユーザー体験を改善するため、顧客提供価値と事業成長を両立する指標の必要性を事業戦略部門に提案しました。

    「成果」としては、顧客のゴールのカタログ化を実践して「MotionBoard:解決のカタチ」サイトを公開しました。そして、解約率が大幅に改善しました。

    「貢献」ですが、改めて「スケールCSは一夜にしてならず」です。データ整備やコンテンツ制作などの準備は、それぞれの強みを生かして役割分担しました。これはどの企業でも同じことだと思います。

    以上を踏まえて、私が一番伝えたいのは、一番下のラインです。それは、「準備はみんなで、グランドデザインは1人の猛烈に強い思いで邁進させる」です。

    弊社はこの1年間、ものすごく多くのことを実施して成功しました。その要因を振り返ると、準備はそれぞれの強みを活かして役割分担したけれど、グランドデザインは1人の強い『思い』を持った人が猛烈に推進したことが、この取り組みにおいてはとても重要だったと思います。

    以上で私の発表を終わります。ご清聴ありがとうございます。

    杉山05

    3. 編集後記

    契約額の小さいお客様が数多いので解約率が高くても仕方ない、デジタルタッチには限界がある、ヘルススコアを使ってCSM(人)が顧客をケアしているので大丈夫、そのように考えて現状維持の延長に留まる企業はとても多いです。特に、施策単位で数多くの取組を続けてきた企業ほど、「やれることには手を打った」という自負もあります。

    しかし、ウイングアーク1stの杉山氏は違いました。今までのやり方を「是」とせず、「スケールCS」という新しい概念と手法を真摯に学び、基本的な「セグメンテーション別の戦い方」から見直していきました。

    「お客様のことを本当に深く理解していないと良い仮説は立てられない」「具体的に実施したことは泥臭いことばかり」という同氏の言葉に、スケールCSの本質が宿ります。大切なのは、「スケールCSを実践できた背景には数年前から多くの人・部門が試行錯誤してきた取り組みがあり、それが今につながっている」という全体像を把握している点です。それは、同氏がスケールCSを「ちょっと真似たらすぐ実行できる」類のことではない、と理解して正統なアプローチを実践したことの証です。

    そんな杉山氏は、講座修了後の1年間に、チームメンバーも巻き込んで数々の取り組みを実践し、その結果、解約率の改善を含む収益インパクト/成果を手にしました。

    スケールCSを実践する日本企業は、これから増えていくことでしょう。そうした後に続く企業にとって非常に役立つ実践知を惜しみなく共有してくださった杉山氏に、改めて感謝申し上げます。 


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    success gako

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