カスタマーサクセスは全社で推進するものですが、営業・マーケティング・プロダクト・サポートなど複数部門が共通言語を持ち、カスタマージャーニーに沿って組織横断で連携できている企業はあまり多くありません。
SAPジャパンでは、営業を含む複数の主要部門から責任者レベルを中心に15名を選抜し、「認定カスタマーサクセス・法人研修」を実施しました。その企画と人選を担ったのが、今回インタビューにご協力くださった小泉氏と長谷川氏です。お2人自身も、既に別の機会で認定カスタマーサクセスの講座を受講されています。
本稿では、なぜ組織横断での受講という形を選んだのか、そしてどのような成果が生まれたのかをご紹介します。事業成長にコミットするポジションにある方にとって、法人研修の新しい活用の仕方を知るきっかけになれば幸いです。
なお、「認定カスタマーサクセス・法人研修」は、カスタマーサクセスの実践に必要な知識を体系的に学べると好評を得ている SuccessGAKO(サクセス学校)の看板プログラムを、会社単位で受講いただく法人用プログラムです。
1. この事例のポイント
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クラウドカンパニーとして事業を進める中、カスタマーサクセスの捉え方が部門ごとに多少異なり、共通認識の形成が課題となっていた
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CSMだけではカスタマージャーニー全体をカバーできないという気づきから、営業・マーケティング、カスタマーサクセス、コンサルタント、管理部門など主要部門の責任者レベル15名を組織横断で選抜して受講した
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受講した営業部門の一部では、プランニングが「製品をどう売るか」だけでなく、「お客様の課題を起点にする」へ変化し始めた
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「SAPは特殊」という思い込みが外れ、自分たちも変わるべきだという共有認識が生まれた
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受講者が自発的に40〜50名規模の社内共有イベントを企画・開催するなど、学びを組織へ広げる活動が生まれた
2. 所属企業・担当ビジネスについて
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小泉和久氏: 常務執行役員 カスタマーエンゲージメント&アドプション事業本部⻑
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長谷川直美氏: エンタープライズアーキテクチャ本部 マネージャー
3. 採用時の課題を教えてください
SAPは数十年にわたり、基幹業務システムをはじめとするソリューションを提供してきました。現在は、クラウドカンパニーとして、お客様の継続的なビジネス変革を支援する事業を進めています。
基幹システムの導入には、プロジェクトによって半年から1年、長ければ2年以上かかることもあります。その長い導入プロセスの中で、お客様に価値を実感していただく瞬間、いわゆる「ワオ・モーメント」を生み出すことが非常に難しいという問題意識がありました。
こうした課題に対する考え方や手法は進化してきています。しかし、その新しい考え方を社内でどう広めるのか、パートナーも含めてどう浸透させるのかが大きな課題でした。
2021年に、社内のオール・エンプロイー・ミーティング(全社員会議)で、弘子さんを招いてカスタマーサクセスのセッションを実施しました。当時は取り組みの初期段階で、「カスタマーサクセスとはなんぞや」といった感じでした。皆なんとなく理解はしつつも、それを自分事として捉え、設計し、実行に移す段階にまでは至っていませんでした。
その後も、「カスタマーサクセス」という言葉ひとつをとっても、部門によって捉え方が多少異なっていました。組織としてカスタマーサクセスに本格的に取り組むには、部門を越えた共通認識が必要でした。

写真:小泉氏
4. なぜ「認定カスタマーサクセス・法人研修」を採用しましたか
私たち2人とも以前に、カスタマーサクセス部のマネージャー陣数名で、認定カスタマーサクセス・5期(2024年11月開講)を受講しました。その時に強く感じたのは、「カスタマーサクセスはCSM(カスタマーサクセスマネージャー)だけでは実現できない」ということです。
マーケティング段階から始まり、営業によるセリング活動、特に「このお客様にこの製品を本当に売るべきか」という判断、導入推進、稼働後の利活用促進まで、お客様のジャーニー全体に沿っていろいろな役割のメンバーが協力する体制が必要です。その中でCSMは稼働後の支援を担いますが、そこから新しいビジネスにつなげるには営業にバトンを渡す必要があります。結局、1つの部門だけではカスタマージャーニーの全体をカバーしきれません。
そこで今回は、営業、マーケティング、カスタマーサクセス、コンサルタント、管理部門などバックオフィスを含む複数の主要部門から、ある程度の意思決定権を持つ15名を組織横断で選抜して法人研修として受講する形を選びました。同じフレームワークを共有し、全員が「自分の役割はカスタマージャーニー上のどこにあるのか」を理解したうえで、横の連携を強化する狙いです。
私たち自身が先に受講していたことで、事前の自己学習と複数回にわたるライブ講義、そして自分事化するためのワークの充実度を知っていました。だからこそ、この研修なら組織横断のメンバーに受けてもらう価値があると確信し、法人研修の採用を決めました。
5. 修了後にどのような成果がありましたか
受講者が自分事として考え始めた
今回の研修で最も大きな成果は、受講者が自分事として考えるきっかけを得たことです。
例えば、営業のプランニングセッションの議論が変化してきています。具体的には、「どうご契約いただくか」だけではなく、「お客様のトランスフォーメーションのためになぜ必要か」、「お客様の課題解決のためのご提案をどう計画できるか」といった、お客様の課題を起点に議論を始めるプランニングへと変わり始めています。
特に、営業組織にとって、こうした「型」から体系的に学ぶ機会は新鮮な気づきになったようです。
「SAPは特殊」という思い込みの自縛が解けた
営業メンバーからは、印象的なフィードバックがありました。日々お客様にトランスフォーメーションを提案している自分たちが、「SAPは特殊だから」と変化を避ける思い込みを持っていたことに気づいた、というものです。
その思い込みを外して、「自分たちも変わらなければいけない」という自覚が生まれたことは、研修の大きな成果のひとつです。
自発的な社内展開活動の意識が高まった
修了後、受講者15名を集めたフィードバックセッションを実施したところ、「SAP版のプレイブックを作ろう」「トレイン・ザ・トレーナーとして社内に展開しよう」といった声が自発的に上がり始めました。
さらに、受講者の中から3名をピックアップしてファイアサイドチャット形式のパネルディスカッションを開催し、研修に参加できなかったメンバーにも学びを共有しました。この社内イベントには40〜50名が参加しています。
このように、有志による企画として、受講者も積極的に関与しながら学びを全社に広げる活動が生まれ始めた流れは、今後、社員自身や会社のトランスフォーメーションに繋がっていくと思います。
6. 研修採用担当者へのメッセージ
カスタマーサクセスの考え方を現場メンバーに浸透させることはもちろん重要ですが、それだけでは組織は変わりません。KPIの設計、組織構造、役割の定義といった、会社の仕組みや仕掛けを変える必要があります。そして、それには意思決定をする上位マネジメント層の関与が不可欠です。
法人研修を実施することで、そうしたマネジメント層が他部門の方々と一緒に学び、会社としての動きや仕掛けをどう作るかを考える良い場・機会をつくれます。特に、複数部門のマネジメント層が集まる場としての活用法が非常に有効だと感じています。
また、この研修は講義を受けて終わりではなく、「では自分はどうする、会社としてどうしていくか」を考えるきっかけになります。参加したメンバーでバーチャルチームのようなものを作り、変革のファーストステップとして何に取り組むかを一緒に設計していく、そんな仕掛け作りの第1歩として非常に有効です。
ですので、1部門だけではなく、私たちが今回実施したように、いろいろなロールの方を巻き込んで参加してもらうことを強くお勧めします。会社としての変革の良いきっかけ作りになると思います。